2008年10月8日水曜日

ノーベル賞(物理学)

今年のノーベル物理学賞に3名の日本人が選ばれました。南部陽一郎氏(自発的対称性の破れ理論)、小林誠氏、益川敏英氏(対称性の破れによる3世代のクォークの予言)です。この事は素直に喜ばしいのですが、今後の日本を考える上で心配な点も透けて見えてきます。

一つは、日本では「日本人が3名受賞」と報道されていますが、国籍という意味では、1名のアメリカ人と2名の日本人が正確です。南部氏は日本生まれですが、1970年にアメリカに帰化しています。ノーベル財団の発表でも、南部氏の受賞国はUSAと紹介されています。

もう一つは、これらの研究論文が発表されたのが約30年前だということ。古い話でも、ノーベル賞の価値に変わりは無いのですが・・・。

これらのことから、日本が置かれた厳しさ、特に自然科学の基礎的な分野での問題が見えてきます。日本は財政的な厳しさが長期に渡って続いており、また、大学や研究機関の研究職の人たちは「成果の見える」研究を求められるようになっています。この事から、現世利益に直接つながらないような研究は敬遠されがちです。その結果、日本の優秀な頭脳がアメリカに流出していないでしょうか。この現象は以前から指摘されていますが、それが加速しているような懸念を感じます。

また、この30年前の研究成果の受賞は、30年後の受賞を保証しません。小林・益川両氏が論文を書いたのは20代・30代の時でした。今の日本で、若い研究者が画期的な論文を書いているのか、書く環境にあるのか、疑問です。今回受賞した物理学のテーマは、当時は傍流であったという事実にも気をつける必要があります。30年後も日本の研究者がノーベル賞を取れるような国であるためには、現世利益につながらない、場合によっては突拍子も無い研究に予算を付ける覚悟が必要です。

そして、日本は、そういう科学技術の基礎研究に投資をするのか、それとも割り切って現世利益を求めるのか、国家像が問われているのです。

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