2006年1月14日土曜日

矜恃

矜恃・・・難しい言葉です。今まで使ったことも無かった。
私が学生の頃、助教授だった先生が「コンピュータ・ソフトウェアは欠陥(バグ)があるかもしれないという前提で堂々と売られるおかしな商品だ」と指摘したことがあります。最近のITを支えているインターネット技術、その根幹は「ベストエフォート」。「できる限りのことをします」という意味で、逆に言えば「運が悪ければダメかもしれない」ということ。
対立する言葉は「ガランティー」。(性能・動作を)「保証する」という考え方で、昔はどんな製品もこれが前提になっていたと思います。動作がおかしければ「欠陥」と指摘されていました。
近頃は人々の考え方も「ベストエフォート」型になったせいか、何かあっても“不具合”“トラブル”という曖昧な言い方をします。裏には「システムは正しく動いているが、想定していない条件が発生した、仕様の範囲外だ」という言い訳が付いています。この“仕様”というのが曲者で、解釈によっては全ての不具合が “仕様”になってしまいます。

一眼レフカメラを使うことも多いですが、昔ながらのフィルムを使用するカメラはシャッターが切れなかったり、正しい露出にならなかったら間違いなく欠陥でした。しかし、近頃のデジタル一眼レフカメラは初期ロットに不具合はつきもので、固まったら電源を再投入という、「ベストエフォート」になっています。
折しも、一眼レフカメラの老舗であるニコンがフィルムカメラから一部を除いて撤退し、デジタルカメラに注力するという発表がありました。

コスト低減や納期厳守、株主の利益確保に追われる現代型の産業では、矜恃という概念は消滅するのかもしれません。

フィルムカメラ製品のラインアップ見直しについて(ニコン)
http://www.nikon-image.com/jpn/news/info/info060111.htm

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